『ファインマンさん 最後の授業』と『セクシーな数学』を読んだ

中途半端に読んでほったらかしにしていた『ファインマンさん 最後の授業』と『セクシーな数学』を読み終えた。いったい何年前に買ったんだろうか。


まず前者について書こう。

ファインマンさん 最後の授業

ファインマンさん 最後の授業

僕は著者の日記か自慢話ってところかと感じた。でも「22 最後の贈り物」という章は間違いなく読む価値がある。そこだけ読めば充分だろう。

はしがきの p.13 にある次の文を理解できないと、この本は楽しめないんじゃないかと思う。

カルテクが、全米の大学の中でも非常に自殺率が高い理由が身にしみて分かった。

この一文を読んで「そうだよね」と思うなら読んでもらいたいし、「なんで?」という疑問が浮かぶなら別の本を選んだほうがいい。

著者にとってはかけがいのない特別な体験だったんだろうし、その感動を読者に伝えたいのだろうけど、僕には伝わったような伝わってないようなもやもやした像しか残っていない。

なぜかというと、実際の研究活動においてどう試行錯誤を繰り返し悩み続けていたのか詳しく載っていないから。研究テーマで悩んでいたのは分かるが、それだけってことはないだろう。

自慢話に思えるのは都合のいい部分しか書いてないからだろうね。


次は後者。

セクシーな数学―ゲーデルから芸術・科学まで

セクシーな数学―ゲーデルから芸術・科学まで

この本はチャイティンのインタビューと講演をまとめたものなので、アルゴリズム情報理論については概論程度しか載っていない。また、同じような話題が何度も出てくるので飽きるかもしれない。前のほうの章から順番に読む必要もない内容なので、いきなり最後の章である 9 章を読むといいように思う。その次は 6 章だろう。残りの章は時間があればという感じかな。

とにかくチャイティンは頭のいい人なんだと思う。インタビューでこれだけの受け答えができるとは。数学、物理学、計算機科学、おそらく計算機工学にまで通じているのだろう*1人工知能分子生物学などに対する見解も面白い。でも深入りはしていなくて、世間話の程度で済まされている。

僕はこの本の 6 章をオススメしたい。この章では、チャイティンの科学観を垣間見ることができる。

個人的に興味を持ったのは 9 章に言及のあるゲーデル不完全性定理の証明と LISP プログラムの類似性だな。

*1:もっと広いだろうけど。