『怖い絵』を読んだ

僕はこの本を発売直後に購入していたのだけど、全くページを開くこともなく積読状態のまま何年も放置していた。

怖い絵

怖い絵

捨てる、物置へ押し込む、ScanSnap で PDF 化してしまう、といった手段を下さずにいつかは読もうと思い続けていたのは、きっと表紙のせいだろう。僕はこの表紙絵「ダイヤのエースを持ついかさま師」が展示されたジョルジュ・ド・ラ・トゥール展@国立西洋美術館へ足を運んでいる。とても素晴しい作品だらけの忘れられない展示だったので、この本の表紙を見てしまうとどうしても前述のような手段をとれなかったのだ。

そして、ようやく「いつか読んでおきたいよなあ」という心のもやもやを消すべく、先日ページをめくりはじめた。

著者の知識や推理は見事だと思う。絵を言葉で語ることのできるのは羨ましい限りだ。女性の目線から出てくる言葉は僕にとって新鮮に感じた。

若干の疑問としては、野暮な言いかたになるけど「怖いとは?」という点。まあ、野暮な疑問であるからこれ以上は深入りしない。読み手それぞれが怖さを感じればいいだけだ。感じなくてもいい。

でも、僕がどうしてもいいたいのは、ラ・トゥールの「いかさま師」の怖さというのは、その構図だけではないと思うのだよね。ラ・トゥールの絵には光の表現に神秘が宿っている。印刷物の上では単なる暗闇にしか見えないかもしれないが。そこにこそ「恐怖」を感じるのではないかと。

まあいいや。とりあえず、生で絵画を観るのはいいことだ*1。そして、絵を観ることで言葉が湧いてくるとなおよろしい。

*1:最近の僕は現代アートばかりだけど。